植物は、発芽してから枯死するまでの長い間、一歩も歩くことなく、ただその場所で生きなければいけません。たとえ喉が渇いても、蛇口の水をひねることさえできず、たとえ大雪が積もっても、それを振り払うことさえできないのです。
私たち人間は、そんな我慢強い植物を、ときに軽い気持ちで植え、動かし、自分の都合で伐採したりもします。
植物は、私たち人間と同じ生命です。
けれども私たちは樹木の命を奪うこともあります。
技術や知識が足りないがゆえに、死なせてしまうこともあります。
だからこそ、植えるときは慎重に考えて欲しいのです。
本当に必要な植木なのか。
本当に植えるべき場所なのか。
庭を楽しむこと、植木を楽しむこと、それはとても素晴らしいことです。その素晴らしいことが、植物の生命を踏みにじるような結末にならないために。
まず大切なのは、植栽する前によく考えることです。
植木屋という、植物を植えることで利益をあげる商売をしている私たちですが、私たちの利益のために樹木の命が粗末に扱われることは、樹木医として耐え難いことです。
だからこそ私たちは、「樹木と人とが共に健康で永続的な生活ができる空間づくり」を全力でお手伝いいたします。
植栽の際には樹木を支えるための支柱をつけます。材料となる竹とシュロ縄は、どちらも天然の素材ですので、経年とともにやがて朽ちていきます。その頃には樹木がしっかりと自分の根で立っていられるようになるでしょう。